本記事では、2025年5月時点で分配金利回りが3%を超える高配当株ETFを6本厳選し、それぞれの特徴や実績を過去5年のデータに基づいて比較します。
株価上昇率、増配率、分配金の安定性、運用コスト、暴落時の値動きなど、長期投資で気になる6項目を徹底評価。
投資スタイル別におすすめETFも紹介するので、「どれを選べばいいかわからない」方の指針になる内容です。
日本高配当株ETF6銘柄の基本データ
表は2025年5月時点で分配金利回りが3%を超える日本高配当株ETF6銘柄を、上場日が古い順に並べたものです。
銘柄コード | ETF名(略称) | 上場日 | 信託報酬(税込み) | 銘柄数 | 分配頻度 |
---|---|---|---|---|---|
1698 | 上場高配当 | 2010/05/14 | 0.308% | 100 | 年4回 |
1577 | NF日本株高配当70 | 2013/03/07 | 0.352% | 70 | 年4回 |
1489 | NF日経高配当50 | 2017/02/13 | 0.308% | 50 | 年4回 |
1494 | One・高配当日本株 | 2017/05/23 | 0.308% | 50 | 年2回 |
2529 | NF株主還元70 | 2019/04/19 | 0.308% | 70 | 年4回 |
2564 | GXスーパーディビ | 2020/08/25 | 0.429% | 25 | 年4回 |
各ETFの特徴(連動指数・投資対象)
【1698】上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)
- 連動指数: 東証配当フォーカス100指数
- 特徴: 時価総額と予想配当利回りに注目して選定された100銘柄(株式90+REIT10)に分散投資
【1577】NEXT FUNDS 野村日本株高配当70
- 連動指数: 野村日本株高配当70(配当含む)
- 特徴: 国内全上場銘柄から予想配当利回り上位70銘柄に投資
【1489】NEXT FUNDS 日経平均高配当株50
- 連動指数: 日経平均高配当株50指数(トータルリターン)
- 特徴: 日経平均構成銘柄のうち配当利回りが高い50銘柄に厳選投資
【1494】One ETF 高配当日本株
- 連動指数: S&P/JPX 配当貴族指数
- 特徴: 10年以上配当維持または増配を続けた優良企業に投資
【2529】NEXT FUNDS 野村株主還元70
- 連動指数: 野村株主還元70(配当含む)
- 特徴: 自社株買い+配当など総還元性向が高い企業70社に集中投資(ただし、東証33業種分類の「銀行業」、「証券、商品先物取引業」、「保険業」、「その他金融業」に属する銘柄は除外)
【2564】グローバルX 日本スーパーディビデンド
- 連動指数: MSCIジャパン・高配当セレクト25指数(配当込み)
- 特徴: 時価総額と配当において一定の基準を満たしたREITを含む利回り重視の25銘柄に投資。
比較指標と評価項目(全6項目)
日本高配当株ETFの6銘柄と、ベンチマークとしてTOPIXに連動するETF【1306】も加えて、6項目に分けて比較し順位付けしていきます。
- 平均分配金利回り
- 株価上昇率(CAGR)
- 分配金の安定性
- 増配率(CAGR)
- 最大ドローダウン(暴落耐性)
- 運用コスト(信託報酬・総経費率)
TOPIX(東証株価指数):日本の株式市場全体を反映する代表的なインデックス。分散投資のベンチマークとして広く使用される。
ベンチマーク:投資信託等が運用の指標としている基準のこと。
CAGR(年平均成長率):投資の成長ペースを表す幾何平均。複利効果を反映し、年率リターンを算出する際に用いられる。
平均分配金利回り(2020〜2024年平均)
平均分配金利回りは、2020年から2024年の過去5年間の平均分配金利回りを算出し順位付けしています。
順位 | ETF(銘柄コード) | 平均分配金利回り(%) |
---|---|---|
1 | GXスーパーディビ(2564) | 5.02 |
2 | NF日経高配当50(1489) | 4.54 |
3 | NF日本株高配当70(1577) | 3.88 |
4 | One・高配当日本株(1494) | 3.65 |
5 | 上場高配当(1698) | 3.58 |
6 | NF株主還元70(2529) | 3.23 |
ベンチマーク | TOPIX(1306) | 2.20 |
単純に配当利回りが高い銘柄を組み入れている【2564】と【1489】、【1577】が上位3つに入っています。
株価上昇率(CAGR)
株価上昇率は、2020年初~2025年5月19日までの株価データから、CAGR(年平均成長率)で年率リターンを算出して順位付けしています。
順位 | ETF(銘柄コード) | 年率リターン(%) |
---|---|---|
1 | NF日経高配当50(1489) | 13.36 |
2 | GXスーパーディビ(2564) | 12.49 |
3 | 上場高配当(1698) | 10.63 |
4 | One・高配当日本株(1494) | 10.05 |
5 | NF日本株高配当70(1577) | 9.85 |
ベンチマーク | TOPIX(1306) | 9.82 |
6 | NF株主還元70(2529) | 8.69 |
株価上昇率の1位は【1489】となりました。逆に、唯一TOPIXを下回る最下位は【2529】です。
分配金の安定性(減配回数・最大減配率)
分配金安定性は、2020年からの過去5年間に減配はあったか、あったなら減配率はどうだったかで評価し順位付けしています。
順位 | ETF(銘柄コード) | 減配回数 | 最大減配率 |
---|---|---|---|
1 | One・高配当日本株(1494) | 0回/5年 | – |
2 | NF株主還元70(2529) | 0回/4年 | – |
3 | GXスーパーディビ(2564) | 0回/3年 | – |
ベンチマーク | TOPIX(1306) | 1回/5年 | -1.20% |
4 | 上場高配当(1698) | 1回/5年 | -7.96% |
5 | NF日本株高配当70(1577) | 1回/5年 | -16.12% |
6 | NF日経高配当50(1489) | 2回/5年 | -13.51% |
平均分配金利回りと株価上昇率で高順位だった【1489】ですが、過去5年で減配が2回あり、分配金の安定性には欠けるようです。
一方、増配と株主還元に積極的な銘柄を集めた【1494】と【2529】が上位2つに入っています。
増配率(分配金CAGR)
増配率は2020年からの過去5年間の平均増配率をCAGR(年平均成長率)で算出して順位付けしています。
順位 | ETF(銘柄コード) | 分配金CAGR(増配率・%) |
1 | NF日経高配当50(1489) | 19.12 |
2 | NF株主還元70(2529) | 18.54 |
3 | 上場高配当(1698) | 16.37 |
4 | One・高配当日本株(1494) | 15.77 |
ベンチマーク | TOPIX(1306) | 15.04 |
5 | NF日本株高配当70(1577) | 14.91 |
6 | GXスーパーディビ(2564) | 10.23 |
意外にも、分配金安定性で最下位だった【1489】が増配率で1位となりましたが、この結果には注意が必要です。
【1489】の増配率には、2021年の分配金46.93円から、2022年年間分配金71.40円(+52.14%)へと大増配した異常値が含まれています。
21年から22年の増配率の高さは、コロナ禍からの株価と配当金の復調のほかに、海運業が大増配した年と一致しているので、それが大きな要因と見られます。
海運業と言えば景気敏感株の筆頭であり、支払われる配当金にはムラがあるので安定しているとは言えません。
【1489】がこれからの5年、10年も同水準の増配率を維持できるかどうかは注意深く見守る必要があります。
【1489】以外だと、増配と株主還元に重きをおいた銘柄で構成されている【2529】と【1494】、株式の他にREITも構成銘柄に入れている【1698】は、ベンチマークであるTOPIXを上回る増配率となっています。
最大ドローダウン(暴落耐性)
2020年のコロナショックから2025年のトランプショックまでの間に、最大ドローダウンがどれだけあったかで評価し、順位付けしています。
しかし、【2564】のようにコロナショック以降に上場した銘柄も含んでいるので、そういったものに関しては参考値として評価してください。
順位 | ETF(銘柄コード) | 最大ドローダウン% |
---|---|---|
1 | GXスーパーディビ(2564) | -19.58 |
2 | NF株主還元70(2529) | -28.61 |
3 | One・高配当日本株(1494) | -28.78 |
4 | 上場高配当(1698) | -28.97 |
ベンチマーク | TOPIX(1306) | -29.6 |
5 | NF日本株高配当70(1577) | -30.06 |
6 | NF日経高配当50(1489) | -30.92 |
コロナショック後に上場した【2564】を除けば、TOPIXよりも最大ドローダウンが小さかったETFは、構成銘柄にREITを含んでいる【1698】と、増配率が高く株主還元に積極的な銘柄で構成されている【2529】と【1494】でした。
一方、単純に予想配当利回りが高い銘柄で構成されている【1489】と【1577】はTOPIXよりも大きい最大ドローダウンを記録しています。この結果は、構成銘柄に海運業や鉄鋼といった景気に敏感な銘柄が多く含まれているからだと考えられます。
運用コスト(信託報酬・総経費率)
日経平均株価やTOPIXといった代表的な株価指数に連動するETFと比べて、日本高配当株ETFは特定の指数に連動する同じインデックス型であっても、信託報酬が高い傾向にあります。
アメリカの有名な高配当株ETFの信託報酬が年率0.1%以下なのを考えると、日本の高配当株ETFにはもっと頑張ってほしいと感じます。
順位 | ETF(銘柄コード) | 信託報酬(税込み・%) | 総経費率(%) |
---|---|---|---|
ベンチマーク | TOPIX(1306) | 0.595 | 0.090 |
1 | 上場高配当(1698) | 0.308 | 0.340 |
2 | NF株主還元70(2529) | 0.308 | 0.360 |
3 | NF日経高配当50(1489) | 0.308 | 0.370 |
3 | One・高配当日本株(1494) | 0.308 | 0.370 |
5 | NF日本株高配当70(1577) | 0.352 | 0.380 |
6 | GXスーパーディビ(2564) | 0.429 | 0.500 |
運用コストに関しては、各社の運用報告書から総経費率まで確認しましたが、どれも似たり寄ったりの状態です。
最下位の【2564】だけ、元の信託報酬の高さもあって総経費率が年率0.5%と、他と比べて悪い結果となっています。
まとめ:投資スタイル別・日本高配当株ETFおすすめ
タイプ | おすすめETF | 理由 |
---|---|---|
とにかく高利回り重視 | GXスーパーディビ(2564) | 5%超の利回り。 ただしコロナショック以降に登場したETFのため、下落耐性の実績が不足しており、総経費率も最も高い点に注意が必要です。 |
株価成長+高配当を狙いたい | NF日経高配当50(1489) | 株価の成長性と高い増配率が特徴で、リターン面で非常に優秀。 ただし、過去5年間で2回の減配があり、配当の安定性には注意が必要です。 |
分配金の安定性重視 | One・高配当日本株(1494)/NF株主還元70(2529) | 減配実績ゼロで、安定的な配当が期待できるETF。 さらに株主還元姿勢も強く、今後の増配にも期待できる。 反面、株価の上昇率はやや控えめです。 |
バランス型の王道ETF | 上場高配当(1698) | 株式90銘柄+REIT10銘柄と分散性が高く、極端な弱点が見当たらないバランス型ETF。 特定の分野に偏らず安定感があります。 |
NF日本株高配当70(1577)は、同じようなETFであるNF日経高配当50(1489)があるので積極的に投資する理由が見当たりませんでした。
ETFを活用すれば、個別株投資に必要な企業分析や決算チェックといった手間のかかる作業を大幅に省くことができ、より手軽に分散投資を実現できます。
また、複数のETFを組み合わせることで、1本ではカバーしきれない業種や銘柄のかたよりも補うことが可能です。
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