タコ足配当に注意!投資信託の特別分配金(元本払戻金)が出る仕組みと対策

高配当投資
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「投資信託の分配金が非課税で受け取れる“特別分配金(元本払戻金)”って何?」

分配型の投資信託に投資していると、普通分配金だけでなく“特別分配金”というものを受け取ることがあります。

一見お得に思えますが、実はこの仕組みには注意点も多いです。

本記事では、特別分配金(元本払戻金)がなぜ出るのか、その仕組みや他の配当・分配との違い、そして投資家が取るべき行動について、分かりやすく解説します。


投資信託の基準価額とは何か?

投資信託の「基準価額」とは、1口または1万口あたりのファンドの価値を示すものです。

この基準価額には、運用成果がすべて反映されています。

投資信託の基準価額(=1万口あたりの価格)には、以下のような運用成果がすべて反映されています。

  • 値上がり益(キャピタルゲイン)
    → 保有している株式や債券などの時価の上昇により、ファンド全体の評価額が増えた場合、基準価額が上がります。
  • 配当金・利子収入(インカムゲイン)
    → 保有資産から受け取った配当金や債券利息などの実現収益も、通常はファンドの資産に組み込まれ、基準価額に反映されます。

つまり、投資信託の基準価額はファンドがどれだけ利益を出しているかを示す“ものさし”であり、運用がうまくいけば上昇、損失が出れば下落します。

また、分配金が支払われたときは、基準価額から支払われるため、その分だけ基準価額が下がる仕組みになっています。


特別分配金(元本払戻金)が出る仕組み

投資信託の分配金には普通分配金と、特別分配金(元本払戻金)の2種類があります。

特別分配金が発生する理由は、運用益が十分でなく、分配金の原資が“自分の投資元本”に食い込んでいるからです。

たとえば、市場が下落して基準価額が自分の取得単価(購入時の価格)よりも下がっている状態で分配金が支払われると、その分配金は「自分の元本を取り崩して受け取っている」ことになります。いわゆるタコ足配当と呼ばれるものです。

この場合、分配金は非課税(特別分配金)となり、自分の投資元本がその分だけ減額修正されます

【具体例】
ある投資信託を取得単価1万円で購入し、分配金が支払われるときに基準価額が1万50円、分配金支払いが100円だった場合を考えてみましょう。

このケースでは、分配金支払い後の基準価額は9,950円になります。

分配金支払い前の基準価額(1万50円)が取得単価(1万円)を50円上回っているので、

このうち50円分は運用益=普通分配金(課税対象)、残りの50円分は元本の払戻し=特別分配金(非課税)として扱われます。

また、分配時の基準価額が取得単価を下回っていた場合(たとえば取得単価1万円、分配時基準価額9,900円で分配金100円の場合)は、取得単価を上回る運用益が無いので、支払われる分配金の全額が特別分配金(元本払戻金)となります

要するに、取得単価に対して利益がないときでもファンドの運用方針で一定額の分配金を出す場合、その“足りない部分”は元本を取り崩して補うしかない

この仕組みが、投資信託で特別分配金(元本払戻金)が出る理由です。


株式の配当金、ETFの分配金との違い

株式の配当金やETFの分配金には、投資信託のような「タコ足配当(元本の取り崩しによる分配)」は存在しません。

なぜなら、投資信託の基準価額は運用益がすべて反映された金額ですが、株価やETFの価格自体には会社やETFの利益が直接含まれているわけではないためです。

  • 株式の配当金
    会社が稼いだ利益の一部を、株主に配当として支払います。配当が出ても株価に会社の利益がそのまま含まれているわけではない。
  • ETFの分配金
    ETFが保有する株や債券などの資産から得られる利益や配当を、保有者に分配します。基本的に運用益に基づいて支払われるため、元本を直接取り崩す分配(タコ足配当)は通常ありません。
  • 投資信託の分配金
    運用益がすべて含まれた基準価額から分配金が支払われるため、分配金の支払いによって基準価額がそのまま下がります。運用益が足りない状態でも分配金を出し続けると、元本を取り崩して分配金が支払われる(=特別分配金/タコ足配当)ことがあります。

つまり、「特別分配金」は実質的に自分の資産を取り崩して現金で受け取る仕組みであり、株式やETFの配当・分配とは本質的に異なるものであることを覚えておきましょう。


特別分配金(元本払戻金)が出たらどうするか

特別分配金は「元本の一部を受け取っている」だけなので、そのまま現金で受け取ると、投資効率が下がります

もし今後もそのファンドで運用を続けるなら、普段は分配金を再投資せずに受け取っている場合でも、特別分配金を再投資する(追加購入する)ことがおすすめです。

再投資のメリット

  • 複利効果が期待できる
    分配金をそのまま再投資することで、口数が増え、将来基準価額が上がったときに受け取れる分配金も増えます。
    また、運用益が積み重なりやすくなり、資産形成効率が高まります。
  • 長期での資産成長につながる
    分配金を受け取って使ってしまうと、その分だけ運用に回す元本が減ってしまいますが、再投資すれば「雪だるま式」に資産を増やすことができます。

● 注意点

ただし、特別分配金が続くということは、ファンドの運用成績が芳しくないことも意味します。

再投資を続ける場合でも、ファンド自体の運用方針や今後の見通しを定期的に見直すことも重要です。


まとめ:タコ足配当に惑わされず、賢く付き合おう

投資信託で特別分配金(元本払戻金)が出る仕組みについて解説してきました。

  • 投資信託の基準価額には、運用成果がすべて反映されている。
  • 投資信託の分配金は、基準価額から支払われる。
  • 取得単価に対して利益がないときでも一定額の分配金を出す場合、“足りない部分”は元本を取り崩して補う。⇒特別分配金(元本払戻金)
  • 株式の配当金やETFの分配金には特別分配金(元本払戻金)は無い。

分配型投資信託の場合、特別分配金(元本払戻金)が出るのは仕方のないことです。

特別分配金を受け取ったときは、そのまま使うのではなく、再投資をすることで長期的な資産形成につなげることができます。

一方で、特別分配金が多いファンドは運用成績が悪化している可能性もあるので、投資の継続を判断する際はファンドの運用状況も必ずチェックしましょう。

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